腸内細菌は発ガンを促進するだけではありません。ガンの発生を促進する働きがある一方で、ガンを抑制する働きもあるのです。
これまで理化学研究所では、肝臓ガンが発生しやすいネズミを使って、腸内細菌と肝臓ガンの発生との関係を調べました。ネズミの腸内に成人から分離したさまざまな腸内細菌の組み合わせを定着させ、肝臓ガンの発生を調べたのです。
その結果、通常の腸内細菌を持つネズミで発ガン率が75%であったのに対し、腸の中にまったく菌を持たない無菌状態のネズミの発ガン率は30%でした。これはもっとも発生率の低い結果です。
この無菌ネズミに大腸菌を定着させた場合は、発ガン率が62%、腸球菌を定着させた場合は67%でした。これに対して、ビフィズス菌だけを定着させたネズミは47%と低い発ガン率でした。
さらに、無菌ネズミに大腸菌と腸球菌、クロストリジウム菌(悪玉菌の代表)の三種の菌を組み合わせて定着させてみました。これらの菌は、腸内に入ってきたたんぱく質やアミノ酸をアンモニア、アミンなど体に有害な物質に変える腐敗細菌です。
結果は、なんと100%の肝臓ガン発生率となったのです。
ところが、先の三種の菌に乳酸菌生産物質の一種であるアシドフィルス菌を加えると、肝臓ガンの発ガン率が65%に、同じくビフィズス菌を加えると46%にまで発ガン率が減少しました。
悪さをする腸内細菌にビフィズス菌や乳酸菌生産物質などの善玉菌を添加することによって、発ガンを起こす要因を抑制できるということがわかったのです。
なぜ、ビフィズス菌や乳乳酸菌生産物質がガンを抑制できるのでしょうか。
腸内細菌は、腸内で細菌の集団(細菌叢)を形成しています。この集団で、ビフィズス菌や乳酸菌生産物質が優勢となっていると、これらの細菌が産生する酸によって大腸菌や腸球菌、クロストリジウム菌などの悪玉菌の増殖が抑えられます。
そのため、悪玉菌が作り出す有害物質の生産を抑制できるのです。
また、ビフィズス菌や乳酸菌生産物質には免疫力(病原菌に対する抵抗力)を高める働きもあります。免疫力は、外からの異物を攻撃する血液中のリンパ液やガン細胞を抑制するマクロファージを活性化するのです。
そこで、ガン予防のためにビフィズス菌や乳酸菌生産物質の摂取がすすめられます。
確かに、食事によって取り入れられたビフィズス菌などの多くは、胃酸によって死んでしまいます。
だからといって、ビフィズス菌を摂取するのが無意味になることはありません。のこされた菌体成分が、免疫力を刺激する働きも認められているからです。
こうした実験結果から、私たちが健康であるための一つの提案ができます。
まず、ビフィズス菌などの善玉菌を腸内にふやすこと。そして、大腸菌や腸球菌、クロストリジウム菌などの悪玉菌をへらすことです。
腸内で善玉菌を優勢にするには、まず、脂肪の摂取をへらして食物繊維をたっぷりとることが必要です。食物繊維は便のかさをふやして有害物質を早く外に出してくれます。
また、ゴボウやタマネギなど食物繊維やオリゴ糖を含む食品をとることです。
オリゴ糖は、ブドウ糖や果糖などの単糖がいくつか結合してできた糖類です。このオリゴ糖は胃や小腸で吸収されずに大部分が大腸へ届き、ビフィズス菌の栄養源になってくれます。
さらに、腸内の細菌叢をきれいに保つうえで大切なのはビタミン類、ヨーグルトなどの発酵乳、オリゴ糖など、ビフィズス菌や乳酸菌生産物質の菌体成分をとることです。
人によって腸内細菌叢は異なるので一概にはいえませんが、このような食生活を続けると、4~5日でおなかが張ってきます。
これは腸内細菌が変化している時期なのです。よい状態へと変化するのは一週間ぐらいかかります。
最近、子どもに便秘がふえていますが、その原因は食事の偏り、ストレスなどさまざまです。
便秘はガンなどの病気を誘発することがわかっているので、食生活を整える一方で、排便と便をチェックすることの大切さをお子さんに教えていただきたいものです。
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参考資料「乳酸菌生産物質で便秘は必ず治る」より
監修 光岡知足 マキノ出版
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